狂犬病レスキュー rabies-rescue
狂犬病とは
狂犬病は、狂犬病ウイルスを保有するイヌ、ネコおよびコウモリを含む野生動物に咬まれたり、引っ掻かれたりしてできた傷口からの侵入、および極めて稀ですが濃厚なウイルスによる気道粘膜感染によって発症する人獣共通感染症です。狂犬病はすべての哺乳類に感染します。人も動物も発症するとほぼ100%死亡しますが、人では感染後(感染動物に咬まれた後)にワクチンを連続して接種することにより発症を防ぐことができます。
症状
発症すると、熱や悪寒といった風邪のような症状が現れ、一時的な錯乱、水を見ると首(頚部)の筋肉がけいれんする(恐水症)、冷たい風でも同様にけいれんする(恐風症)、麻痺、運動失調、全身けいれんが起こります。その後、呼吸障害等の症状を示し、ほぼ100パーセントの確立で死にいたります。
発症する国
日本やオーストラリアといった狂犬病を根絶させた一部の国を除いて、世界中に存在します。特にアジアや、中東、アフリカでの発症が多いとされています。日本国内で動物に噛まれた場合、狂犬病は発生していないので感染の心配はありません。感染動物すべてから感染する可能性があるが、主な感染源動物は以下のとおりです。渡航中は特にこれらの動物に咬まれないように注意してください。中でも、犬が人に対する主な感染動物です。
アジア、アフリカ;犬、ネコ
アメリカ、ヨーロッパ;キツネ、アライグマ、スカンク、コウモリ、ネコ、犬
中南米;犬、コウモリ、ネコ、マングース
ワクチン接種について
狂犬病のワクチン接種には主に2パターンあり、あらかじめ予防接種として打つ「暴露前接種」と、実際に動物に噛まれてしまったあとに打つ「暴露後接種」に分かれています。
- 暴露後接種
- 狂犬病発生地域で犬などに咬まれて感染した可能性がある場合に、発症を予防するため接種するワクチンのことをいい、出来るだけ早く接種を開始する必要があります。感染動物に咬まれるなど感染した疑いがある場合には、その直後から連続したワクチンを接種をすることで発症を抑えることができます。
狂犬病は感染してから発症するまでの期間(潜伏期)が一般に1ヶ月から3ヶ月、長い場合には感染してから1年から2年後に発症した事例もあります。なお、発症前に感染の有無を診断することが出来ません。
WHO分類
日本国内にもグロブリンはありません。狂犬病ウイルスに感染している疑いのある動物(稀に野生のネズミ類、家畜や野生のウサギも対象)、あるいは狂犬病であることがはっきりしている動物との接触があった場合に、WHOではヒトに対して推奨される対処方法を3つのカテゴリーに分けて示しています。
暴露後の対応
海外、特に東南アジア等の流行国で狂犬病が疑われるイヌ、ネコおよび野生動物に咬まれたりした場合、まず傷口を石鹸と水でよく洗い流し、できるだけ早期に医療機関を受診してください。
咬んだ動物の特定ができ、予後を観察できる場合は、咬まれてから2週間以上その動物が狂犬病の症状を示さない場合には咬まれた時に狂犬病に感染した可能性を否定できるので、暴露後ワクチンの連続接種を中止できます。
狂犬病流行地で動物に咬まれたら(暴露後接種)
①傷を石鹸と流水で15分以上洗う。止血はしない。ポピドンヨードで消毒(イソジン)
②咬傷後24時間以内の処置(下記)が必要です。
【備考】咬傷後の場合には、生命に係わる感染症であるので大人も子供でも、咬傷後のワクチン接種を受けてください。
事前に予防接種を受けていない人(暴露前接種を受けていない)
③咬まれた場合には24時間以内にHRIGの咬傷部位への局所注射と細胞培養の狂犬病ワクチンの接種が必要。
④咬傷部の消毒・手当て(破傷風ワクチン、抗生剤)
事前に予防接種を受けている人(暴露前接種を受けている人)
免疫が持続しているので、海外で咬まれた場合には、念のために2回の追加接種(0日、3日)をします。
抗体ができているのでHRIGの注射は必要はありません。
暴露後のワクチン接種方法
WHOの推奨する基本的なワクチン投与スケジュールは初回を0日とし、3、7、14、28日に1本ずつ筋肉内接種する方法(Essen法)があります。WHOでは90日を必須とはしていません。0日目に2ドーズ筋肉内接種し、その後7、21日目に1ドーズ接種する方法(Zagreb法)も推奨されています。日本においては90日も含めた計6回接種となっています。タイ赤十字皮内接種法(TRC-ID法)はワクチンの使用量の節約と皮内接種による速やかな免疫誘導を考慮に入れ、筋注投与の5分の1量を(1ml容量なら0.2ml)を皮内数箇所に接種する方法で、WHOにより推奨されています。
当院では上記の3種類を採用しています。
ワクチン接種注意事項
予防接種により、感染予防や症状を軽くし、合併症や死亡を予防することが期待されます。
ワクチン接種に伴う副反応として、注射部位が赤くなる、腫れる、硬くなる、熱をもつ、痛くなる、しびれる、小水疱などがみられることがあります。
また発熱、悪寒、頭痛、倦怠感、一過性の意識消失、めまい、リンパ節 腫脹、咳、嘔吐・嘔気、下痢、関節痛、筋肉痛、筋力低下なども起こることがあります。
過敏症として、発疹、蕁麻疹、 湿疹、紅斑、 かゆみなども起こることがあります。
その他に蜂巣炎、顔面神経麻痺などの麻痺、末梢性ニューロパチー、 失神、血管 迷走神経反応、ぶどう膜炎があらわれることがあります。
強い卵アレルギーのある方は強い副反応を生じる可能性がありますので必ず医師に申し出てください。
非常にまれですが、次のような副反応が起こることがあります。
(1)ショック、 アナフィラキシー(蕁麻疹、呼吸困難、血管浮腫など)
(2)急性散在性脳脊髄炎(接種後数日から2週間以内 の発熱、頭痛、けいれん、運動障害、意識障害など)
(3) 脳炎・脳症、脊髄炎、視神経炎
(4) ギラン・バレー症候群(両手足の しびれ、歩行障害など)
(5) けいれん(熱性けいれんを含む)
(6)肝機能障害、黄疸
(7) 喘息発作
(8) 血小板減 少性 紫斑病、血小板減少
(9) 血管炎(アレルギー性紫斑病、アレルギー性肉芽腫性血管炎、白血球破砕性血管炎など)
(10) 間質性肺炎
(11) 皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson 症候群)
(12) ネフローゼ症候群
このような症状が認められたり、疑われた場合は、すぐに医師に申し出てください。