インフルエンザワクチンを受けない人たちの理由を聞くと、打ってもかかることがあるから、ワクチンの株が外れると意味がないから、といった話がよく聞かれます。では、誰がワクチンの株を決めているのでしょうか。インフルエンザウイルスの流行は全世界で膨大なデータがとられており、流行の種類や状況をリアルタイムに詳しく把握しています。そうしたビッグデータを元にWHO(世界保健機関)が毎年そのシーズンの流行株を発表しており、日本ではさらにその情報を元に厚生労働省と国立感染症研究センターの特別チームが日本で製造するワクチンの株の種類を決定しています。
このように全世界、また日本全国で測定している詳細で膨大なビックデータをもとに流行株を予測しているため、実際は流行の予想が全く外れるという事はほとんどありません。実際、過去20年間のうち17年は完全一致しており残りの3回も、未知の新型ウイルスが発生したか、大規模な変異型が発生したかですがこの場合は部分一致はしており、打ったワクチンが全く無駄だったということはありません。その年に流行するのがA型のインフルエンザウィルスであればHAとNAの型が多少異なっても、ワクチンによる予防効果は相当に得られるとされ、受けるメリットは大きいと言えるでしょう。
最近の流行株について、コロナ禍の2年間は世界的にほとんどインフルエンザの流行がありませんでしたが、コロナ前の2019-2020年と昨シーズンに流行したウイルスの型は、2009年に発生したH1N1新型インフルエンザウイルスを基本型としておりこれが70%、残り20%がそれよりも以前から流行を繰り返しているH3N2、残りの10%が他のA型やB型のインフルエンザウイルスでした。今シーズンも、流行するとすれば同様のH1N1またはH3N2が流行すると予測されています。
今年のインフルエンザワクチンの製造株は以下です。
2024-2025シーズン インフルエンザHAワクチン製造株
A型株
A/Victoria(ビクトリア) /4897/2022(IVR-238)(H1N1)pdm09)←2023年度と同様の株
A/California(カリフォルニア) /122/2022(SAN-022)(H3N2) ←新しい株
B型株
B/Phuket (プーケット) /3073/2013 (山形系統))←2023年度と同様の株
B/Austria(オーストリア) /1359417/2021(BVR-26)(ビクトリア系統))←2023年度と同様の株
*翻訳:A型/ビクトリアという地名で分離報告された/4897番目に分離された/20221年に分離された、IVR-238という型番、H1N1の表面抗原を持つウイルスという意味です。
医療法人社団クリノヴェイション 理事長
専門は総合診療
離島で唯一の医師として働いた経験を元に2016年に東京ビジネスクリニックを開院。
日本渡航医学会 専門医療職