インフルエンザワクチンの効果 (Vaccine Effectiveness:VE) は70~90%とされています。これはどういう意味でしょうか。そう質問すると多くの人が、ワクチンを打った人の70~90%はインフルエンザに感染しなくなる。と回答します。この解釈は間違いです。
正しくは、ワクチンを打った人と打たない人と比較して70~90%インフルエンザにかからなくなる (=70~90%かかりにくくなる) と言う意味です。これは統計学的な話なので、医療者にとっては馴染みのある感覚なのですが、一般の方が聞いてもピンとこないかもしれません。結論としては、感染する確率は接種しない人の5分の1程度になると丸暗記してしまっても構いません。この数字は個人レベルでは、年齢や基礎疾患の有無により大きく変わります。また感染による発症予防のみならず、感染してしまった場合の重症化と死亡を減らす効果があることも証明されています。
インフルエンザワクチンを打ってから効果が期待できるようになるまでは2週間かかり、抗体持続期間は平均で約5カ月間(流行がない場合には3ヶ月程度)とされています。
インフルエンザワクチンの副反応についてですが、このワクチンは副反応が少なく軽いことで知られています。禁忌 (絶対に打ってはいけない人) は過去にインフルエンザワクチンでアナフィラキシーを起こしたことがある人のみです。それ以外に明確な禁忌はありません。
よく受ける質問として、卵アレルギーがある人は受けていいのかという問い合わせがあります。確かにインフルエンザワクチンは鶏の受精卵を使用してウイルスの培養をしていますので、卵アレルギーのある方は腫れが強くなったり蕁麻疹が出たりといった軽度のアレルギー反応が出ることがあり、接種に注意が必要です。ただそれを承知の上で医師の判断の下で注意して接種すれば問題ありません。
問診票に書かれている、喘息などの呼吸器疾患のある人、てんかん等の痙攣のある人、心臓疾患、肝疾患、腎疾患のある人、免疫不全の人、家族や親族にこれらの病気がある人は接種して問題ありません。むしろこうした基礎疾患がある場合には接種が推奨されています。
37.5度以上の発熱をしている人、急性疾患に罹患している人は延期を勧めています。
医療法人社団クリノヴェイション 理事長
専門は総合診療
離島で唯一の医師として働いた経験を元に2016年に東京ビジネスクリニックを開院。
日本渡航医学会 専門医療職