RSウイルスって何?

今回は、RSウイルスについてご説明します。

RSウイルスは例年は冬に流行るのですが、今年は春から夏に大流行して小児科の入院病棟が逼迫して問題となりました。

RSウイルスはどんなウイルスなのか

RSウイルスは例年は冬に流行る風邪で、2歳までにほぼすべての子どもが罹るとされています。我々のようなクリニックでも、2歳未満の風邪の子どもで最も多い原因がRSウイルスとされています。一度感染しても再感染しますが、再感染では軽症で済むと考えられています。接触感染や飛沫感染で感染し、感染してからの潜伏期間は4~6日とされます。

症状

症状は、普通の風邪と一緒で「鼻汁」「発熱」「咳」などを起こしますが、他の風邪より「鼻汁」「鼻閉」といった鼻風邪の症状が多いとされています。また、下気道に感染しやすいため「喘鳴(ゼイゼイした呼吸)」を起こしやすく、特に初回感染では下気道感染(気管支炎や肺炎)を起こしやすいとされています。3回目以降の感染からは軽症で済むことが多くなります。
大人では、風邪症状で済みます。
症状は、数日から1週間程度かけて徐々に良くなります。

診断

通常他の風邪を起こすウイルスとの区別は困難ですが、1歳未満・冬・周囲の流行状況・鼻汁、鼻閉といった鼻風邪の症状や、下気道に感染しやすいため「喘鳴」(ゼイゼイとした呼吸)といった特徴から疑われます。
もともと健康な乳幼児では、検査をしても治療方針に変わりがないため、検査は不要です。よく保育園などから検査を依頼され親御様が受診されますが、検査はほとんど必要がありません。入院が必要といった特別な状況では検査が必要で、鼻咽頭ぬぐい液などでPCR検査または迅速抗原検査を行います。当院では、迅速抗原検査のみ可能ですが、日本の保険診療で迅速抗原検査ができるのは、入院中の患者・乳児(1歳未満)・パリビズマブ製剤(シナジス®︎)の適用となる患者、に限られています。

治療

特別な治療法はないため、軽症の場合は、他の風邪と同様に、症状を和らげる治療を行います。
重症化した場合も、特別な治療法はなく、基本的に支持療法(輸液・呼吸の管理など)になります。
RSウイルスが重症化しやすいのは、通常は6ヶ月未満です。早産・低出生体重の赤ちゃんでは1歳まで、先天性心疾患など先天性の疾患のある赤ちゃんでは2歳までが重症になりやすいとされています。
そのため、6ヶ月未満で下気道感染(気管支炎や肺炎)を起こしていると考えられる赤ちゃんは、原則病院紹介としております。6ヶ月以上であれば、下気道感染が疑われても、全身状態や呼吸状態が良好であれば、当院のようなクリニックにて経過観察で問題ありません。
一方で健康な成人では、繰り返し罹るものの、風邪症状で済みます。ただしお年寄りの方や免疫の病気をお持ちの方では重症化の恐れがあります。

感染対策

接触感染(ウイルスが付いた手を介して広がる)や飛沫感染(咳やくしゃみで広がる)が主とされていますので、手洗いやマスク着用、人混みを避けることが感染対策となります。
新型コロナウイルスと同じように、特別な治療法がなく、感染対策が一番大切になります。
パリビズマブ製剤(シナジス®︎)という、RSウイルスの重症化の予防に使われるというお薬がありますが、これはワクチンのような扱いで定期的に接種して予防的に使用するものです。早産の赤ちゃんや先天性心疾患、他の慢性疾患のある赤ちゃんでのみ適応があります。

なぜ今年、RSウイルスばかりが大流行したのか?

新型コロナウイルスでマスクの着用や学校閉鎖などの感染対策で、他のヘルパンギーナ、手足口病、マイコプラズマ、ロタウイルス腸炎などは全く流行しなかったにも関わらず、
なぜ今年、RSウイルスばかりが大流行したのかはっきりした説明はついていません。
今年RSウイルスばかりが大流行した一つの説明として、RSウイルスは接触感染が主のため通常の感染予防で防ぎきれなかったという可能性があります。
もう一つの説明としては、今年は感染対策が緩和されたことで、昨年免疫を獲得できなかった子どもたちの間で、流行ってしまった可能性があります。もしこの説明が正しければ、インフルエンザも去年流行しなかったため、今年の冬はインフルエンザが流行する可能性もあるかもしれません。ですので、今年のインフルエンザのワクチン接種も例年通り大切となっています。ただし北半球のインフルエンザが流行する目安として考えられている南半球での流行はみられませんでした。

まとめ

  • RSウイルスは、鼻症状と下気道感染が特徴的で、接触感染が主である冬の風邪。
  • 2歳までにほぼすべての子どもが罹る。
  • 6ヶ月未満の乳児では重症化し入院が必要になることもある。
  • もともと健康な乳幼児では、検査をしても治療方針に変わりがないため、検査は不要。
  • 特別な治療法はない。
  • 手洗いやマスク着用、人混みを避けることが感染対策。
  • 今年大流行した理由については、はっきりした説明がついていない。

長くなってしまいましたがイメージはついたでしょうか。

手洗いといった感染対策に一緒に取り組んでいただけましたら幸いです。

参考文献
・小児RSウイルス呼吸器感染症診療ガイドライン2021
・IDWR 2021年第29号
“https://www.niid.go.jp/niid/ja/rs-virus-m/rs-virus-idwrc.html”

著者:和田 晃宜
東京大学医学部附属病院初期研修
日本内科学会 内科認定医
監修:内藤 祥
医療法人社団クリノヴェイション 理事長
専門は総合診療
離島で唯一の医師として働いた経験を元に2016年に東京ビジネスクリニックを開院。
日本渡航医学会 専門医療職

コラム一覧へ戻る

トップページへ戻る

カテゴリー

PAGE TOP
Translate »