労働災害(労災)について解説します。

労働災害(労災)とは

労働災害(以下、労災)とは、労働者が仕事中または通勤途中に負った怪我や病気のことで「業務災害」と「通勤災害」の2つの大きな区分があります。業務災害は、労働者がその職務を行っている最中に発生した事故や怪我、病気を指し、通勤災害は通勤中に発生した事故などのことを言います。

労災保険で対象となる怪我や病気の種類

労災保険は、労働者が仕事中または通勤途中に負った怪我や病気に対して国が医療費や休業補償などを行う制度です。適用されるには、基本的にその怪我や病気が「業務上の原因」または「通勤途上の原因」によるものである必要があります。どちらの場合も、労働者であれば正社員はもちろん、パートタイム労働者やアルバイトであっても労災保険が適用されることがあります。

労災保険で対象となる怪我や病気は多岐にわたります。例えば、飲食店で調理中のやけど、通勤途中の駅の階段や店舗内での転倒による打撲や捻挫、オフィスでの長時間のパソコン作業による肩こりや腰痛なども業務災害として労災保険の対象となります。また、運転業務中の交通事故での負傷や、営業職などでの長時間の運転による疲労が原因で発症する過労死や心臓病も対象となることがあります。

さらに、病気についても、仕事が原因で慢性的なストレスにより精神的な疾患を発症した場合や、特定の職場環境によって発症したアレルギーや化学物質による中毒も労災保険での診療が可能です。例えば、化学工場での化学物質曝露による呼吸器疾患や、営業職のプレッシャーでうつ病を発症したケースも報告されています。

労災保険では診察費用はかかりません

労災保険を利用して診療を受ける場合、患者さんの自己負担はありません。労災保険が医療費を全額負担するため、支払った医療費はすべて還付されます。また、休業補償や療養のための交通費の支給など、補助も多岐にわたります。たとえば、怪我が原因で仕事を休む必要がある場合は、休業4日目以降から休業補償給付が支給(休業3日目までは事業主の負担)され、賃金の60%相当額が支払われます。加えて、会社からの手当てなどがある場合は、その分を含めた補償も行われます。

注意が必要なのは、労災保険を適用するには正規の手続きを行い、労働基準監督署に必要な書類を提出することが必要です。会社や病院が勝手に労災保険を適用することはできません。したがって、まずは雇用主への報告を必ず行い、労災申請を進めることが大切です。

労災申請の手続きと必要書類について

労災保険を利用するためには、まず怪我や病気が業務中に発生したものであることを会社に報告する必要があります。報告を受けた雇用主は、「労働者死傷病報告」を作成し、労働基準監督署に提出します。この書類が受理されると、労災保険の適用が認められます。患者さん自身が準備する必要のある書類は、通常「労働者の業務災害等に関する証明書」(様式第5号)や「療養補償給付支給請求書」(様式第7号)などです。休業補償や障害補償などの申請には別途書類が必要になることもありますので、詳しくは会社の人事総務、もしくは医療機関で確認して下さい。

当院は労災指定病院であり、業務中に発生した怪我や事故、あるいは仕事に関連した病気などに対して労災保険を使用して診療を受けることができます。労災保険を利用した治療は、医療費の負担が軽減されるだけでなく、基本的には診療が完結するまでの継続性も保証されます。どのような怪我や病気が対象になるか、また手続きに関して不明点があれば何でもご相談下さい。

内藤 祥
医療法人社団クリノヴェイション 理事長
専門は総合診療
離島で唯一の医師として働いた経験を元に2016年に東京ビジネスクリニックを開院。
日本渡航医学会 専門医療職

 

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