途上国の一人旅では、何よりまずはA型肝炎予防を

A型肝炎とは

A型肝炎は、A型肝炎ウイルス(HAV)によって引き起こされる感染症で、主に肝臓に炎症を起こします。
HAV感染により、発熱、吐き気、黄疸、腹痛などの症状が生じることがあります。
この病気は、特に衛生環境が不十分な発展途上国地域で流行しやすい特徴があります。

A型肝炎の概要と経過

A型肝炎ウイルスに感染すると、約15~50日の潜伏期間を経て症状が現れることが一般的です。
感染初期には一般的な風邪のような症状や、食欲不振、嘔吐、腹痛などが見られ、次第に黄疸が出現することもあります。
多くの場合、数週間で症状は自然に軽快し、数ヶ月以内に完全に回復します。
重篤な合併症を引き起こすことは稀で死亡率は高くありませんが、仕事や旅行での渡航先で罹患してしまうと、目的のスケジュールがほぼすべて台無しになってしまうことは明らかです。

A型肝炎の流行地域

A型肝炎は全世界で見られる感染症ですが、特に発展途上国や衛生状態が不十分な地域での発生が多く報告されています。
中南米、アフリカ、中央および東南アジアなどの地域では、感染のリスクが高いとされています。

A型肝炎の感染経路

経口感染
最も一般的な感染経路。汚染された食物や水の摂取によってウイルスが体内に入ります。生のシーフードや未洗浄の野菜の摂取、汚染された水の摂取は特にリスクが高く危険です。

接触感染
感染者の排泄物と直接的な接触があると感染のリスクがあります。また家族など、感染者と密接に接触することで感染したとする報告があります。

A型肝炎の症状

A型肝炎の症状は感染後2~6週間で現れることが一般的です。症状には以下のようなものがあります。

黄疸: 皮膚や目の白部が黄色く変色します。
発熱: 高熱が出ることがあります。
倦怠感: 体力の低下や疲れやすさが現れます。
腹痛: 特に右上腹部に痛みが生じることがあります。
食欲不振: 食事への関心が低下します。
吐き気や嘔吐: 胃腸の不調が引き起こされることがあります。
暗い尿や薄い便: 肝炎による胆汁の影響で尿や便の色が異常になることがあります。

A型肝炎の治療

A型肝炎には特定の治療薬は存在せず、主に症状の緩和を目的とした対症療法が施されます。
一般的には入院による点滴や全身管理の維持療法が必要とされますので、海外で感染した場合には現地の病院への入院を余儀なくされます。
自宅やホテルで療養する場合には、以下がポイントとなります。

休養:まず体力を回復させるため、十分な休養をとることが推奨されます。
バランスの取れた食事:栄養価の高い食事を摂取し、アルコールの摂取は避けることが求められます。
脱水対策::水分補給を適切に行うことで脱水状態の予防や対策をします。

A型肝炎流行地での注意事項

特に発展途上国や衛生状態が不十分な地域ではA型肝炎の感染リスクが高まります。
そのため、以下の点に注意することが重要です。

飲料水: 安全な水源からの水を飲むか、水を十分に沸騰させてから摂取する。
食事: 生のシーフードや肉、未洗浄の野菜や果物の摂取を避ける。
手洗い: 食事前やトイレ後は必ず手を洗うことで感染リスクを低減させます。

予防としてのA型肝炎ワクチン

A型肝炎のワクチンは、感染を防ぐための非常に効果的な方法として広く認識されています。
通常1回目の接種後から1年程度の免疫を得ることができ、2回目の接種後には数十年にわたる免疫が確立されます。

A型肝炎ワクチンの副作用

A型肝炎のワクチンは一般的に安全とされており、副作用は稀です。ただし、接種後に以下のような軽度の副作用が報告されることがあります:

接種部位の痛みや腫れ
局所もしくは全身の発熱
倦怠感

これらの副作用は、通常は短時間で自然に消失します。非常に稀なケースとして、重篤な副作用が現れる可能性もありますが、ワクチンの利益はそのリスクをはるかに上回ります。

A型肝炎ワクチンの接種スケジュール

A型肝炎のワクチンは、2回の接種が推奨されます。最初の接種後、6か月から12か月後に2回目の接種を受けることで、長期的な免疫を確立することができます。
1年未満の短期間の渡航の場合には、出発前に1回のワクチン接種を受けるだけで、感染リスクを効果的に下げることができるため、途上国への渡航の際には目的に関係なく接種が強く推奨されています。

まとめ

A型肝炎は予防が可能な感染症であり、ワクチンの接種は感染リスクを大幅に低減する効果的な手段となります。旅行や特定のリスク群に属する人々は、特にワクチンの接種を検討することが推奨されます。

内藤 祥
医療法人社団クリノヴェイション 理事長
専門は総合診療
離島で唯一の医師として働いた経験を元に2016年に東京ビジネスクリニックを開院。
日本渡航医学会 専門医療職

 

コラム一覧へ戻る

トップページへ戻る

関連記事

  1. 手足口病とはどんな病気?

  2. 2価コロナワクチンって何?オミクロン株対応ワクチン(BA.1…

  3. 新型コロナワクチン3回目の副反応についての調査を報告します

  4. 撲滅寸前、だけど恐ろしい病気 ポリオ

  5. ③ 妊娠中にインフルエンザワクチンは打っていいの?

  6. ⑤ ワクチンの株は誰が決めているの?株は当たるの?

カテゴリー

PAGE TOP
Translate »