3回目接種後4週間時点での抗体価についても調査した最新版はこちらの記事をご覧ください。
以下、2回目接種後6か月時点での内容です。
メッセンジャーRNA型ワクチンは、切れは良いが効果持続は短いようだ
欧米を中心に世界中で新型コロナウイルスの大きな流行が再び起こっています。なぜでしょうか。
オミクロン株の感染力の強さ、自粛行動の限界、そしてワクチンの効果切れが理由とされています。
2021年中盤には先進国を中心にコロナワクチンの2回接種完了し、これでもうコロナウイルスの脅威から開放されたかのようなムードが一時はありました。
そんななかでイスラエルやヨーロッパの一部の国でワクチン接種3回目の議論が出てきたとき、そんな意味のないことをするくらいなら途上国へワクチンを分配すべきだと、WHOをはじめ世界中で反対する声も大きかったことは記憶に新しいところです。
しかしその後ワクチン接種後の抗体価の推移がデータとしてきちんと出てくると、2回目接種4~6ヶ月後に3回目の接種をすることが必須であることが分かってきました。
3回目の追加接種は本当に必要なのでしょうか。
ワクチン接種と抗体価の独自調査
私たちのクリニックでは新型コロナウイルスワクチン(コミナティ®ファイザー社製)接種に際し、①接種前・②1回目接種後・③2回目接種後・④接種6ヶ月経過後の4時点で、新型コロナウイルスのスパイク蛋白IgG(中和抗体)の抗体価の測定を行いました。
こちらの表にグラフとしてデータをまとめます。
ワクチン1回接種では不十分、2回接種で十分な予防効果
まず①ワクチン接種前の抗体価を見てみましょう。
6人の抗体測定者のうち、緑色はワクチン接種前に新型コロナウイルスに感染した被験者です。ワクチン接種前より抗体価が242AU/ml(以下、抗体価の単位は省略)と若干ですが上がっていることがわかります。それ以外の5人は、当然ながら抗体価は6.8未満つまり抵抗力が全くない状態です。
2021年5月にワクチン1回目を接種しました。その2週間後の後の抗体価が、②のグラフ群です。
罹患者である緑色の人のみ飛び抜けて抗体価が高く反応していますが、それ以外の5人は600~800の範囲でおおよそ同程度の数値です。
新型コロナウイルススパイク蛋白IgG抗体(=中和抗体)の抗体価と感染予防効果の関係性としては、抗体価が1000未満だと有効性が50%以下とされています。ワクチン1回目接種のこの時点ではまだ発症予防効果が不十分だということがわかります。
その1ヵ月後2021年6月にワクチンの2回目を接種しました。これが③です。
抗体価は低い人で6000~高い人で10,000、罹患者はそれ以上の数値となっています。中和抗体の抗体価が4160で発症予防の有効性が95%とされていますので、測定した6人は全員この抗体価のラインを大きく超えており、新型コロナウイルスに非常にかかりにくい状態であることがわかります。つまりワクチンを2回受けることで、期待される予防効果がほぼ確実に実現されるということがわかりやすく示されました。なお海外でのワクチンと抗体価の推移も同様の結果となっています。
ワクチン2回接種で抗体価は10倍に、しかし半年経つと10分の1に
では、このワクチンの予防効果はどのくらいの期間持続されるのでしょうか。
2回接種が完了して感染予防に十分な抗体価を獲得、そこから6ヶ月経過した2021年の12月に4回目の抗体価測定をしました。これが④です。
すると驚くことに2回目接種後の高い抗体価は、その後急速に低下し6ヶ月経過すると1回目接種と同等の数値である500~850程度まで下がっていることが分かりました。赤の被験者は2回目接種後に新型コロナウイルスによるBreakthrough感染を起こしてしまったので、1人だけ抗体価が高く残っている状況だと推測できます。先ほど示したように、抗体価1000未満だとワクチンの有効性は50%以下とされていますので、ワクチンを2回接種して6ヶ月が経過すると、いつ新型コロナウィルスに感染してもおかしくない状態に戻ってしまっているということがわかります。このデータは国際的な抗体値測定の値ともほぼ一致しており、コロナワクチンの3回目追加接種が2回目接種の半年後には必要とされる根拠となっています。
まとめ
結論としまして、コロナワクチンは1回では不十分、2回受けることで新型コロナウイルスにかかりにくい免疫力を獲得できますが、その効果は短く半年以内に3回目の追加接種をして抗体価を再度引き上げる必要があります。
ワクチンを2回受けたことで安心してしまうと、現在の欧米のように感染の大流行を引き起こすことが推測されます。
2回目を接種して6ヶ月が経っている人に関しては、現状の流行状況下にあっては新型コロナウイルスにいつ感染してもおかしくない危険な状態ですので、1日でも早い3回目の追加接種が強く推奨されます。
医療法人社団クリノヴェイション 理事長
専門は総合診療
離島で唯一の医師として働いた経験を元に2016年に東京ビジネスクリニックを開院。
日本渡航医学会 専門医療職