2021年7月19日現在、我が国におけるコロナワクチンの接種回数は7,000万回(2回目接種完了が2,700万人)を越えました。医療機関や自治体集団接種でのファイザー社製コロナワクチンに加え、職域接種が始まり新たにモデルナ社製コロナワクチンを接種する人が増えてきています。
どちらのワクチンもメッセンジャーRNAタイプのワクチンで同じ種類に属するのですが、モデルナワクチンにはある特有の副反応”モデルナアーム”が出現することで話題になっています。
モデルナワクチン接種後の腕のかぶれに注意!
最近外来診療をしていると、腕がかぶれた、腕を虫に刺された、腕に湿疹ができた、という理由で受診される若い女性を見かけます。梅雨が開けて急に気温が上がりノースリーブを着用される方も多く、女性にとって腕に発疹があることは当然見た目も気になるのでしょう。こうした患者さんに「ここ最近でコロナワクチンを受けましたか」と聞くと、かなりの確率で先週会社でモデルナのワクチンを受けましたというような返答が来ます。これがモデルナアームです。
↑モデルナアームの発症例
モデルナアームの特徴は?
結論を先に言いますと、これは一時的なアレルギー反応の一種で、痒みやヒリヒリした痛みを感じますが、1週間ほどで自然に消えるので心配はありません。
特徴としては、通常の即時型アレルギー反応のように接種直後ではなく接種1週間後くらい(中央値は7日後、最短で2日、最長で12日)に生じることが多く、また接種部位ではなくその付近やもっと下の肘の方に皮膚症状が出る場合があるという点が挙げられます。ワクチン接種から時間が経っていて、かつ接種部位ではないところにも皮疹が出現するため、患者さん自身もワクチンと直接結び付けて想像できず、虫刺されやかぶれではないかと思って受診することが多いようです。なぜこのような時期と部位に皮疹が出現するのかはまだよく分かっていません。
どのような人に多い?
モデルナアームは、海外ではCOVID-armとも呼ばれていますが、アメリカでモデルナワクチンの接種が始まった2021年1月にはすでに報告が多数上がっています。頻度は3-4%ですので、25-30人の接種につき1人ほど生じる計算となります。どういうわけか、ほとんどが女性(80%以上)で、若い年齢(中央値38歳)に明らかに多いことが分かっています。人種による発症頻度の違いは未だはっきりしていませんが日本でも欧米と同程度の報告が確認されています。接種した腕のみに出現し逆側の腕には見られず、おおよそ1週間程度で自然消退します。またファイザー社製ワクチンでは1例も報告がなく、モデルナ社製ワクチンに特有の現象のようです。
2回目の接種は受けていいの?
モデルナアームは、遅延型アレルギー(IgGを介したアレルギー反応)の一種ではないかと考えられています。現時点では、重症の即時型アレルギーであるアナフィラキシーとは関連がないとされていますので、仮に1回目の接種でモデルナアームが生じた人でも、2回目は予定通りのスケジュールで接種して問題ありません。2回目の接種時も同様の症状が出ることが多く、皮膚症状の出現は1回目より少し早まることが多いですが、皮膚症状が重くなるということはないようです。必要があれば、冷やしてかゆみを抑える、鎮痛薬のアセトアミノフェンを内服する、ステロイドなどの抗炎症薬の塗り薬を使用する、などの対応をして自然に治まるのを待ちます。また2回目を逆の腕に接種することが一般的ですが、同じ腕に接種してはいけないということはありません。
まとめ
日本で接種可能なファイザー社製ワクチン、モデルナ社製ワクチンはともに高い効果が確認されており、大きな副作用は現時点では頻度が少なく安全性の高いワクチンとされています。一方で、マイナートラブルと言われるワクチンによる局所反応や全身症状は比較的出やすく、COVID-armやモデルナアームもこの一時的な局所反応のひとつです。副反応に対する過度な心配はせず、接種可能な条件であれば、1人でも多くの人が1日でも早くワクチン接種を受けることが社会で求められています。
医療法人社団クリノヴェイション 理事長
専門は総合診療
離島で唯一の医師として働いた経験を元に2016年に東京ビジネスクリニックを開院。
日本渡航医学会 専門医療職