薬剤耐性菌が世界で猛威を振るっており、年間70万⼈の⽅が命を落としています。
このまま何も対策を取らないと2050年には年間1000万⼈の⽅が薬剤耐性菌によって命を落とすことが予想されています。
東京ビジネスクリニックが挑むアクションプラン
⼀般的にAMR(薬剤耐性)に求められる分野としては6つが挙げられます。
私たちは主に①普及啓発・教育、②動向調査、③感染予防・管理、④抗⽣剤適正使⽤に努めてまいります。
抗⽣剤処⽅に対する考え⽅の変化
「抗⽣剤適正使⽤」は「抗⽣剤を処⽅しないことが⽬標」ではありません。
例えば⾵邪症状を訴える⼈のなかで、以前は本当に抗⽣剤が必要かわからないため「とりあえず全員に出しておこう」という考えが主流でした。
現在では「本当に抗⽣剤が必要な患者さんを⾒極めて処⽅しよう」という考え⽅になっています。また抗⽣剤は細菌をやっつける作⽤はありますが、直接熱を下げたり、咳を⽌めたりする効果はありません。
⾵邪に抗⽣剤は効くの?
⾵邪のなかでもウイルス性の場合は抗⽣剤が効きません。ただし⼀部の細菌感染には効果があるため⾒極めて抗⽣剤を処⽅致します。ウイルス性の⾵邪のなかでも、⼀部はどうしても肺炎に移⾏してしまいます。抗⽣剤投与による有効な肺炎予防効果はなく、4000⼈に抗⽣剤を投与してはじめて1⼈予防できる程度です。耐性菌や薬疹など副作⽤のリスクの⽅がはるかに上回ります。
厚⽣労働省 抗微⽣物薬適正使⽤の⼿引き 2017より
厚⽣労働省による抗微⽣物適正使⽤の⼿引きによると外来で抗⽣剤を処⽅するケースは以下の3つのケースのみということになってきます。
① 中等症状以上の副⿐腔炎 ② 溶連菌が陽性であった場合 ③ Red Flagの⼀部
内服しても体に吸収されない抗⽣剤
使⽤する抗⽣剤のなかには、せっかく内服したのに体に吸収されにくく⼗分な効果が期待できない抗⽣剤もあります。
特に吸収率の低い「第3世代セフェム系抗⽣剤」はAMRアクションプランのなかでも削除対象になっています。
当院では使⽤する抗⽣剤の種類にも⼗分注意して処⽅いたします。また投与期間についても漫然と処⽅はせず、経過を確認しながら適切な投与期間を決めて参ります。
吸収率が⾼い抗⽣剤⼀覧
吸収率が低い第3世代セフェム系抗⽣剤
不要な抗⽣剤の⻑期投与
これまで抗⽣剤の投与期間には明確な基準がなく、慣例的に⻑期処⽅されていました。しかし近年になって抗⽣剤の投与期間を短くしても、⻑期投与時とくらべて効果に差がないことが分かってきました。抗⽣剤の⻑期処⽅は耐性化のリスクを⽣むだけではなく、残薬の保管や⾃⼰判断での服⽤による副作⽤のリスクなどにもつながり危険です。適切な抗⽣剤を適切な期間処⽅することが⼤切です。
みんなで取り組んでいくAMR(薬剤耐性)対策
当院では、さまざまな感染対策の取り組みのひとつとしてAMR(薬剤耐性)対策に全スタッフで取り組んで参ります。
安全な抗⽣剤を適切な期間で処⽅いたします。場合によっては抗⽣剤の投与を推奨しないこともあります。患者様からの貴重なご意⾒も参考にさせていただきながら、みんなでAMR(薬剤耐性)に取り組んでいこうと考えております。
ご協⼒をよろしくお願いします。
参考
AMR臨床リファレンスセンター
http://amr.ncgm.go.jp/medics/2-4.html
内閣官房 国際感染症対策調整室
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/infection/activities/amr.html
急性副鼻腔炎診療ガイドライン2010
http://plaza.umin.ac.jp/~jrs/pdf/guideline_demo.pdf
抗微⽣物薬適正使⽤の⼿引き 第⼀版
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000166612.pdf
Diagnosis and Treatment of Acute Uncomplicated Cystitis
https://www.aafp.org/afp/2011/1001/p771.pdf